前回の記事で
従業員満足(ES)を高めるためのアプローチとしての
『他者への貢献実感』について説明しました。
他者への貢献の実感というのは
従業員が力を入れている領域や工夫を
上司やマネージャーが見落とさないことが大切だという話をしました。
今回は、
他社貢献実感を高めるために
従業員が力を入れていることを
組織として、きちんと救い上げることの大切さについて 説明しますね。
① 見落としてはいけない従業員の頑張り
② 従業員の頑張りを拾い上げることの会社へのメリット
③ 従業員の頑張りを拾い上げないことの会社への損失
④ まとめ
① 見落としてはいけない従業員の頑張り
従業員満足(ES)を高めていくためには、
従業員自身に
“他者に貢献できている”という実感を持たせる必要があるというのは
前回の記事
こちらでも詳しく説明しています。
言うのは簡単なのですが、
これが意外と難しい。
従業員が“貢献できている”と思っているポイントというのは
会社側が考えているものと異なっていることが多いからです。
また、会社が思いもよらないところに
従業員は力や工夫を注いでいて、
そのことを会社側が見落としていることが多いのです。
また、部署や仕事の仕方にもよって、
そのポイントは異なり、多岐にわたります。
例えば、
ある医療機械メーカーの
営業兼サービス(修理などの保守)を担う人材を例にとってみましょう。
営業マンは機会を販売するだけでなく
機械の修理などサービスマンとしての業務も担っています。
営業数字を追い求めるだけでなく、
修理依頼が来れば、
迅速に対応し、
顧客満足を高めることも大切になります。
会社の営業会議等では基本的に売り上げのことのみ着目され、詰められます。
その反面、営業マンは慢性的に
修理依頼が来ると、それに追われなかなか販売のための活動に時間が割けなくなるという
ことになっていました。
そこで、その営業マンは
時間を効率的に使うために
・緊急の修理の発生率を下げる
・顧客からの苦情を減らす
・トラブル時に強気に出れるようにわきを固める
ということを考えました。
その会社では、営業マンは修理に追われるため
機械を修理しても伝票や修理記録を残さないという状況がまん延していました。
また、基本的には機械の故障を予防するという発想がないため
顧客から修理で呼ばれるまでは特に対応しない状況でした。
機械が壊れたら「今すぐ来い!!」と
顧客から呼び出されるので、
緊急で時間を取られてしまい、
営業に支障をきたす、
若しくはそれへの対応に追われるという状況により
営業マンは慢性的に疲弊していました。
そこである営業マンは以下のことをするようになりました。
(ⅰ)近くを通ったら、医院に顔を出す
(ⅱ)(ⅰ)を通じ、点検の機会を設けて、機械の故障の前兆があれば、その場で対策を提案すする(対処する)
(ⅲ)修理をしていなくても機械を指一本触れたら、伝票等で記録を残す
ということに取り組みました。
これらによって、
・緊急事態を未然に防ぐ
・トラブルになっても、会社と自分の立場を守る
これらにより、
売上アップに割ける時間を増やそうという意図でやっていました。
どれも、医療機器メーカーとして当たり前に実施するべきことですが
その会社では、どれもおざなりにされていました。
ちなみに、その会社は
営業成績のみが評価項目だったため
それ以外の上述の様な工夫は気が付いているのかいないのかはともかくとして
一切の注目や声がけの対象にはなりませんでした。
ここまで、従業員が主体的に行動していなくても、
・事務職の人間がいつも気持ちよく仕事を引き受けてくれているから社内での評判がよい
・事務職の対応が迅速で社外からの評判が良い
等の様な事の裏にも 従業員が色々と工夫している結果でもあります。 ここまで自主的でなかったとしてもに業務効率を上げるための取り組みがあったとします。
会社からの指示があるからやっているわけではない。
こういった取り組みを従業員がやっているのを
従業員自身が大きな声で言わなければ
基本的に会社側は気が付かないケースが大きいです。
こういった、
従業員が個別に工夫をしたり、
力を入れていることというのは
従業員は口には出さなくても、
労いの言葉をかけられる、
称賛されると嬉しいものです。
当たり前ですよね。
自分がこだわっているものを褒められて嬉しくない人間などいないのですから。
② 従業員の頑張りを拾い上げることの会社へのメリット
さて、
従業員が自主的に取り組んでいるこれらの事
ねぎらいの言葉をかけたり、
賞賛の言葉をかけるのが何がよいかというと、
お金がかからないということです。
先輩、上司、管理職が気が付き
一言声を掛けたらそれでよいのです。
これを従業員に媚びを売っているといってやらないこともできるでしょう。
しかし、これらの言葉はかけられることで
増長したり、権利を主張することもありません。
何のリスクもコストもかからない。
対価に差し出すのはほんの少しの意地です。
リスクもコストもかけずに、
従業員満足度(ES)を向上させ、
生産性と売り上げが上がるのでしたら安いものです。
また、これらのことというのは、
組織として、抽出し
組織的に再現できるようにするべきものなのです。
【CSスタンダード】というのは
難しいマニュアルやノウハウで格好良くやるものではありません。
頭でっかちにやるのではなく
日々の実務から生まれてくる、
現場現場の経験を
社内で有機的に水平展開して
再現することなのです。
CSスタンダードに関しては
また、改めて紙面を割いて詳しく説明しますね。
③ 従業員の頑張りを拾い上げないことの会社への損失
こういった従業員の自主的な取り組みやこだわりというのは
活かしきれていないのが実情です。
理由は色々とあるでしょう。
・忙しくて、いちいち部下の個別の取り組みに向き合う時間が取れない
・部下に媚びを売るようで嫌だ
・自分はそんなことしなくても、仕事はできた
・その部下のことが個人的に嫌い
こんなところでしょうか。
また、
部署の結果の直接の要因や
直接の評価項目以外は評価しないといった
会社や部署の価値観というのもあるかもしれません。
しかし、それに当てはめて、
それに直結しないものを評価しないとなると
評価する側は楽かもしれませんが
従業員の満足度とモチベーションの向上を図る機会を
失っていることになります。
組織として、再現性を高めたり
安定的に従業員の満足度とモチベーションを維持するのであるなら、
やるべきですね。
④ まとめ
従業員の満足度(ES)とモチベーションを上げていくために
従業員の“他者へ貢献できている”と感じる気持ちは
利用しない手は有りません。
それは、
従業員が業務遂行上、
・力を入れていること
・得意としていること
などを認めて、褒めてやればよいのです。
これには特別なコストもリスクもありません。
是非、ほんの小さなプライドと手間だけ対価にして
取り組んでみてはいかがでしょうか?
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